2016-5-19 ECHA 欧州化学品庁、当初の予定より約2ヶ月遅れではあるが、6/21に、欧州の公式化学物質安全アセスメントと報告書作成ツールの新版 Chesar 3.0をリリースすると発表。
http://echa.europa.eu/view-article/-/journal_content/title/new-version-of-chesar-available-in-june
あわせて同リリース日に開かれる無償のwebinarの申し込み受付を開始した。
化学品の安全な使用を目指して
2016-5-19 ECHA 欧州化学品庁、当初の予定より約2ヶ月遅れではあるが、6/21に、欧州の公式化学物質安全アセスメントと報告書作成ツールの新版 Chesar 3.0をリリースすると発表。
http://echa.europa.eu/view-article/-/journal_content/title/new-version-of-chesar-available-in-june
あわせて同リリース日に開かれる無償のwebinarの申し込み受付を開始した。
この記事は、Agenda 21ページの続きです。今回は19章第1節を読み終えます。Agenda 21 19章第1節には19章全体の話題が提示され、話の展開が暗示されています。
前回も言いましたがAgenda 21の19章は工業化学品やバイオサイド等の化学品、そしてそれを使った物品(article ー成形品とも訳されている)に対する今日の化学規制の方向性を理解するのに重要です。そこでここではAgenda 21 19章を丁寧にゆっくりと読んで、わかりやすい訳をつけ、さらに、解説を何回かに分けて書くことにしています。
Agennda 21 19章の最初の二文では、21世紀の持続可能な発展、人の生活の向上というAgenda 21の全体の大きな課題のもとで、環境の観点から化学品をうまく管理すること(化学品健全管理)が必要であり、それについて19章で記載されていることが暗示されていました。
では前回の冒頭の2文に続き、第1節のすべてを訳すことにします。
Agenda 21 – Chapter 19
ENVIRONMENTALLY SOUND MANAGEMENT OF TOXIC CHEMICALS, INCLUDING PREVENTION OF ILLEGAL INTERNATIONAL TRAFFIC IN TOXIC AND DANGEROUS PRODUCTS
有害化学品の環境にとって健全な管理―有害で危険な製品の不正国際取引防止を含めて―
19.1. A substantial use of chemicals is essential to meet the social and economic goals of the world community and today’s best practice demonstrates that they can be used widely in a cost-effective manner and with a high degree of safety. However, a great deal remains to be done to ensure the environmentally sound management of toxic chemicals, within the principles of sustainable development and improved quality of life for humankind. Two of the major problems, particularly in developing countries, are (a) lack of sufficient scientific information for the assessment of risks entailed by the use of a great number of chemicals, and (b) lack of resources for assessment of chemicals for which data are at hand.
19.1 化学品の多用は世界の共同体の社会的経済的目的を達成するために不可欠です。今日、もっともうまくいっている事例によって、化学物質は費用効果のある方法で、そして、非常に安全な方法で広く使用できることが明らかになっています。しかしながら、持続可能な発展と人の生活の質の向上という理念のもとで、環境にとって有害な化学物質を健全に、確実に管理するためにはやらなければならないことがまだたくさんあります。大きな問題が二つあります。 特に発展途上国で問題です。 a) 一つは多種類の化学品を使用することによってもたらされるリスクを評価するための科学的な情報が十分でないということであり、b) 今一つはデータが手元にあっても化学品の評価をするための資源が足らないということです。
課題が二つあるといっています:
a) 化学品の使用取扱に伴うリスクを評価するための科学情報の不足と b) データがあってもそれを評価するための資源の不足です。 それらが、発展途上国で顕著であるといっているわけです。
この段落の理解のポイントとして二つ挙げます:
aでは、「化学品の使用取扱」による悪い影響がもたらされる可能性(リスク)がどんなものであるか理解するのに必要な情報が足りないと言っているのであって、単に化学品の情報が足りないと言っているのではないということです。
その情報とは、人や環境に及ぼす、化学品の使用取扱によって引き起こされるリスクを評価するために必要なものだというのです。
ある化学品が人や環境に悪い結果をもたらすのは単にその化学品の危険性(ハザード)によって決まるわけではなく、その化学品をどのように使うかで決まります。 たとえば、誰もが人にとって安全で有害でないと思っている水ですら、過剰な摂取により水中毒(water intoxication, water poisoning)と呼ばれる症状を引き起こします。東京マラソンの公式のサイトでランナーに水の摂取不足による熱中症とともに過剰摂取による水中毒に注意を呼び掛けています(http://www.tokyo42195.org/marathonman2013/healthcare_bn01.html)。
つまり、どんなものであれ、適切に取り扱わなければ危険である、リスクがあるということです。 後に具体的に述べられていますが、製造国では許可されていない使用取扱いが発展途上国で実施されていることについて言っています。つまり、特に発展途上国では 安全な使用取扱いの情報(リスクのある使用取扱い情報の裏返しですが)が不足しているということです。
無論、その化学品が持つ本質的な危険性(又は有害性)、ハザード情報もまた重要です。 その化学品が本質的に潜在的にどのような影響を与える可能性があるかによって、安全な使用取扱いの範囲が決まってくるわけですから。 このハザード情報についても後に具体的に述べられています。
bでもう一つ不足しているとしているのが、化学品の使用取扱リスクを評価するための資源です。 このことについてはAgenda 21 19章の後ろの方で詳しく述べられることになります。
ここで単語resourceの意味するものに注意が必要です。 これは「資源」のことで、「資金」に限りません。そう訳してしまうとこの後の文を理解できません。
もともとresource(資源)の意味は何でしょうか。 例えばoxford dictionaryでは次のように記載されています:
“(usually resources) a stock or supply of money, materials, staff, and other assets that can be drawn on by a person or organization in order to function effectively:local authorities complained that they lacked resources” http://www.oxforddictionaries.com/definition/english/resource?q=resource
つまり、「人や組織が効果的に機能を果たすために、あてにできるお金や材料、職員などであって、備えや補給品で後に役立つもの」というわけです。例文は、「地方当局は自分たちには使えるもの(資源)がないと不満を述べた」というわけです。
P.F. Drucker (Management: Tasks, Responsibilities, Practices. Haper Collins e-books, 第4章 Dimensions of Management, 1 Purpose and Mission, Paragraph 6)もこう言っています:
“The second task of management is to make work productive and the worker achieving. Business enterprise (or any other institution) has only one true resource: man. ”
「管理(management –経営と訳してもよい)の二番目の機能はその機構の作業の生産性を高め、そこで働く者が成就できるようにすることである。 企業(あるいは、いかなるほかの機構であれ)それが持つ真の資源は「人」だけである。
Agenda 21では、後で読むことになりますが、19.21 (c)では、Human resource development (人的資源開発–つまり人材の育成)の必要性を指摘しています。 化学品の良い管理(sound management)のためには、人が資源として重要で、あてにできる人材が不足していて、その育成が必要だといっているわけです。
次回は19.2で現在の課題について具体的に述べている内容を見てみます。
2013/12/17 ECHAはバイオサイド(殺生物剤)に関する新しい手引き Guidance for Human Health Risk Assessment を公開した。
バイオサイドに関するガイダンスシリーズの第三巻パートBに位置づけられる。
人健康リスクアセスメントに関するバイオサイド活性物質とバイオサイド製品に対するハザードアセスメント(hazard assessment)、曝露アセスメント(exposure assessment)、そして、リスク特性記述(risk characterisation)を実施する方法に関する技術的アドバイスが記載されている。
hazardは、危険性、有害性、危険有害性、ハザードなどとさまざまに訳し分けられている。 欧州化学品規制の文脈の上で訳しわける意味はほとんどない。 danger(ous)とhazard(ous)の両方の語がCLP規則上で使われているが、この両者CLP規則上で歴史的な意味以上の差があるわけではない。 参照: Dangerous と Hazardous
assessmentは、評価と訳されている場合もある。 ただ、risk assessmentとは定義の異なるrisk evaluationという言葉もあり、混同を避けるためにrisk assessmentをリスク評価とせずにリスクアセスメントとしている場合があり、このブログではできるだけassessmentにはアセスメントの訳語を当てている。
risk characterisation (= risk characterization ) は、リスク特性化、とか、リスク判定と訳されている場合が多い。 ただ、リスクの特性を明らかにする作業だけでなく、明らかにしたものを記述して、場合によれば、作成した文書まで含むこともあるので、このブログではリスク特性記述と訳している。
A.I.S.E 欧州石鹸洗剤工業連合会
http://www.aise.eu/reach/?page=exposureass_sub4
Cosmetics Europe 欧州化粧品工業会
EFCC 欧州の建設用化学品業界団体
http://bauchemie.vci.de/wiki/SPERC_UseR_CC/Seiten/Content.aspx
FEICA 欧州の接着剤と封止剤の業界団体
http://www.feica.eu/ehs-sustainability/reach/feica-use-descriptors
各業界の状況は欧州化学工業連盟 (Cefic)の次のウェブ頁 のOverview table of associations activities (Excel) で随時要約公開されている:
http://www.cefic.org/Industry-support/Implementing-reach/Guidances-and-Tools1/
そのほかの団体からも公開される予定のようだ.
この結果, Chesar 2 により, より現実的な曝露アセスメントの実施が容易となり, REACHの当局(ECHA)に提出が義務付けられてるCSR用曝露シナリオ, 及び, 供給網(supply chain)に流すことが義務付けられているSDS(拡張SDS)用曝露シナリオの作成の効率が格段にアップすることになろう.
どのような曝露シナリオが作成できるかはChesar 2.2をダウンロードし, 次の頁でECHAが公表しているChesar 2によるCSR実例を試してみることにより容易に理解できる.
http://echa.europa.eu/web/guest/support/practical-examples-of-chemical-safety-reports
ECHAによると, Stoffenmanger 5で実施した曝露量推定結果をChesar 2用に掃き出したファイルをChesar 2.2に取り込むことができる(次頁参照).
確認したところ, 取り込みはChesar 2.2画面のライフサイクルツリーで寄与シナリオをクリックする必要がある(確かにマニュアルにはそう書いてある)(図1参照).
図 1 外部曝露量推定ツールの結果の取り込み
ただし, 外部曝露アセスメントStoffenmanager 5をクリックした時に表れるimportメニューはアクティブにならない(次図参照).
図 2 外部ツールをクリックして現れるメニューでは取り込めない
Stoffenmanger上では5つのステップで処理する. そのうち第1ステップをキャプチャしたものが図3である.PROCが選択できることに注目. Stoffenmanager 4.5にはなかった機能である.これで格段にREACH上の処理がしやすくなった.
図 3 Stoffenmanager上でPROCの選択
化学物質(chemical)とその使用取扱(use)を管理する欧州の化学品規制であるREACHの重要な要件である曝露シナリオに関する知識, 技術, 手法に関する情報を交換するために, ECHAと経済部門(セクター)の団体 CeficやConcawe, Eurometaux, Fecc, A.IS.E, DUCCで構成されるENES(曝露シナリオ情報交換ネットワーク)に関する情報が公開されています.
曝露シナリオは「安全な使用取扱の記述」であり, REACHがリスクベースの規制にさらに踏み込んだ一つの象徴です.
このネットワークは2011年11月に第1回が開かれ, 2013年5月に第4回の会合が開かれるようです. この情報については次のECHAのページから閲覧できます.
http://echa.europa.eu/about-us/exchange-network-on-exposure-scenarios
Stoffenmanager 5がリリースされREACH対応モジュールが公開になりました.
https://www.stoffenmanager.nl/Default.aspx
1. 労働者曝露評価用のPROCカテゴリの選択が可能になりました.
2. EU公式化学アセスメントと報告書作成ツール Chesar 2用の.chrファイルが出力可能になりました (現時点ではChesar側がこれに未対応のようですが早晩対応版が出るでしょう).
3. ただし,REACH exposure scenarioのフォーマット対応版(Chesar .chrファイル形式での出力) は2500ユーロ/年の費用が掛かります(30日は無料で評価することはできる).
外部曝露アセスメントを作成して寄与シナリオをクリックすればStoffenmanager 5によるChesar 2用掃き出しファイルが取り込めることがわかりました.
EU化学物質庁(ECHA)、欧州労働安全衛生庁(EU-OSHA)は、欧州労働組合連合(ETUC)とIndustriALL欧州労働組合(IndustriALL Europe)の労働者のためのREACH情報キャンペーンに協力しています。
そのキャンペーンの目的は、REACH曝露シナリオの理解を図り、危険有害な物質(hazardous substances)を間違いなく安全に使用し、企業が取扱るためのステップを取ることを促すものです。この義務は、いわゆる化学会社だけに課せられた義務でなく、危険有害な物質を使用取扱を行う企業一般が対象であるということの理解が重要です。
REACHは、多くの物質の供給者に安全な使用取扱条件を記載した曝露シナリオを安全データシート(いわゆる(M)SDS)に添付することを義務付けており、この曝露シナリオ添付安全データシート(拡張安全データシート eSDS)は、REACH新機軸の主要なポイントであり、労働者の化学物質の安全を守るための核となるものです。
まだまだREACHの義務に対する企業の認識の普及が進んでいないため、このキャンペーンが展開されているようです。
この四者は連名で2ページのリーフレットを発行しREACHについて準拠すべき企業の義務を簡潔に説明しています。概要を記載します:
企業は次のチェックをまずしなければなりません:
1. 2のいずれかが否であれば、次のいずれかの行動を企業はとらなければなりません。
ECHAはREACHが第一義的には化学物質の製造と輸入業者に要求される化学安全アセスメントとその結果としてのSDS用曝露シナリオを作成をREACHに準拠して楽に作成できるようにChesarと呼ばれるツールを開発し無償で企業に提供しています(このツールはREACH登録の書類作成にも役に立ちます。eSDS用曝露シナリオのの生成そのものをこのツールで行えるようになるのは2013年はじめと計画されています。)。
2013年1月10日 欧州化学物質庁(ECHA)は、企業が楽に化学安全アセスメントを実施し、化学安全報告書を作成するために自身が公開しているツール(Chesar 2.1)用のライブラリ提供ページを開設しました: http://chesar.echa.europa.eu/web/chesar/support/library
このページではSPERCライブラリが提供される予定となっており、格段に化学安全アセスメントが実施しやすくなることが期待されます。
また、近い将来のChesarのバージョンアップによって可能となる安全データシート(SDS)に添付すべき曝露シナリオの自動生成に欠かせない標準語句(standard phrase)のライブラリも、このページで公開されることが期待されます。