バイオサイド製品と処理品

Biocidal products バイオサイド製品とTreated articles 処理品は違った概念です。EUで求められる要件が違います。ただし、処理品がバイオサイド製品になる場合もあります。

以下ここでは、法令等を訳すとき、わかりやすさを第1にしており、より厳密な把握のためには原文に当たられることをお勧めします.

処理品とは

欧州のバイオサイド製品規則(BPR, Regulation (EU) No 528/2012)では次のような定義がなされています.

「処理品」とは、一つ以上のバイオサイド製品で処理した、または、それを意図的に組みこんだ物質、混合物、あるいは、物品である(BPR 3条 1. l ).

treated articleと、短い名前を与えていますが、その意味は、上記の意味であり、バイオサイド製品で処理―処理及び意図的組込み―をした物品―物質、混合物、物品―を、処理品としています.

バイオサイド製品とは

規則3条1.(a)では定義が二つのインデント段落に分けて記載されています:

一つ目は、

  • 使用者が使うときの形態が物質又は混合物であり、かつ、
  • 下記の意図を目的とした、一つ以上の活性物質で構成されるもの、又は、それを含有するもの、それを発生するものであり、かつ、
  • 意図として、有害生物の破壊、弱体化、無害化、作用の予防、又は、その他の方法で有害生物の影響を抑えるものである.ただし、その方法には、単なる物理作用若しくは機械作用よる方法を含まない.

今一つは、

  • それ自身は前項に合致しない物質又は混合物であるが、
  • 上記の意図で使用することを目的としている物質又は混合物.

そして、

 殺生物性主な機能として持つ処理品はバイオサイド製品と考えるものとする.

としています.

処理品がバイオサイド製品として扱われるケース

最後の一文が、処理品とバイオサイド製品の関係の理解に重要です.

最後の一文が意味しているのは、バイオサイド製品(biocidal product)で処理―処理および組み込み―した物品を、BPR上処理品(treated article)と呼ぶ、その処理品自身の主な機能が殺生物機能(殺生物主機能 primary biocidal function)であるとき、その処理品はBPR上バイオサイド製品として扱われるということです.

では、殺生物主機能 Primary biocidal functionとは何か、そして、殺生物性(biocidal property)とは何か、これについてはまたこのサイトで近いうちに投稿します.

訳語について

このブログ投稿では、次の英単語の訳語として次のものを採用して、REACH/CLP/BPRでの訳語の一貫性をもたせて、わかりやすさを狙っています.

英単語 採用訳語 よくみられるその他の訳語
article 物品 アーティクル, 成形品
treated article 処理(物)品 処理成形品, 処理製品(成形品), 処理された成形品
product 製品
biocidal product バイオサイド製品 殺生物性製品、殺生物製品
biocidal function 殺生物機能 殺生物性機能
primary biocidal function 殺生物主機能
substance 物質
active substance 活性物質
mixture 混合物

例えば、REACHでもCLPでもBPRでもarticleという言葉が同じ概念で使われています.ただし、だからと言って、同じものを指すわけではありません.したがって、欧州が出す各種資料でも、必要に応じて、”not only articles within the meaning of the REACH Regulation”「REACH規則の意味における物品だけでなく」などと説明しています(ECHA 2013).
原文に忠実に、しかも、簡潔に、余分なことを記載せず訳すには、articleを物品と訳すのが良いと考えました.BPRにおけるarticleの意味は物品の日本語の本来の意味とそれほど違わず、REACH/CLPがかなり限定的に使われていると考えられます.BPRのarticleを「成形品」と訳してしまうのはかなり苦しいと考えます.

「バイオサイド製品」とproductの訳語として「製品」を使いましたが、わかりきったことかもしれませんが、productの意味を英英辞書で確認しますと、

a thing produced by labor

material created or produced and viewed in terms of potential sales

(Randam House Kernerman Webster’s College Dictionary Application ver1.0.8)

労働によって製造された物.創作され、製造されたもので、販売される可能性があるとみられるもの (小生の訳).

というわけです.さらに言わずもがなですが、日本語の「製品」の意味は、

原料に手を加えて作った品物 (三省堂 大辞林)

この最後の「品物」というのは今の文脈では少々気に入りませんが、まあいいでしょう.

要するに、バイオサイド製品とは、殺生物機能をもつように製造された物とざっくりとは理解できます.正確な理解はもちろん規則原文をよらなければなりません.

一方、article 物品は、

an individual object, member, or portion of a class; item; an article of clothing

an item for sale; commodity.

(同上)

ある種類の個別の物、その種類に属する物、その種類の属する一部の物; 衣料品、衣類

販売のための物、販売品;日用品

そして、日本語の「物品」は

品物。特に,不動産以外の有体物。 (三省堂)

「製品」(product)は、「産物」「製造物」;「物品」(article)は「商品」「品物」.前者は工業生産上の観点からの言葉であり、後者は商業取引上の観点からといってもいいと思います.

参考文献

BPR Regulation:  REGULATION (EU) No 528/2012 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 22 May 2012 concerning the making available on the market and use of biocidal products  http://echa.europa.eu/regulations/biocidal-products-regulation/legislation

ECHA 2013:  Control of treated articles in the Biocidal Products
Regulation http://echa.europa.eu/documents/10162/11106628/11_bshd_bernsel_treated_articles_en.pdf

関連投稿

バイオサイド処理品

Chesar 2 翻訳用語集 物品 article

バイオサイド処理品

この文書は、ECHAの次のページの参考訳です.後半に若干の補足をしています.

ECHA > Regulations > Biocidal Products Regulation > Treated articles

ここの訳文では、treated article は、(バイオサイド製品で)処理した物品 =(バイオサイド製品での) 処理品 と訳しています.

処理品 (Treated articles)

バイオサイド製品規則(Biocidal Products Regulation, BPR)には、一つ以上のバイオサイド製品で処理された物品、又は、意図的に組み込まれた物品の使用取扱いに対しての決まりがあります.

バイオサイド製品規則に従って、物品はEUで承認された活性物質を含むバイオサイド製品でのみ処理することができます.これは、旧バイオサイド製品指令(2013年9月1日からBPRにより失効)からの変更点です.旧指令では第三国からの輸入品はEUで承認されていない物質での処理が可能でした.例えば、ヒ素で処理した木材やDMFを含むソファーや靴.

企業は、販売する物品のバイオサイド処理について情報を、消費者にすぐに提供できるようにしておかなければなりません.消費者が処理物品について情報を求めてきた場合、その物品の供給者は45日以内に無償でその情報を提供しなければなりません.

処理品の表示ラベル (Labelling of treated articles)

処理品の製造者または輸入者は製品ラベルについて、分類、表示、及び、包装に関する規則(CLP規則)と、バイオサイド製品規則によって定義される追加的な要件に正しく従っている必要があります.

処理品の製造及び輸入者が、処理品を、バイオサイド製品規則(BPR)に従って、表示ラベルする必要があるのは次のような場合です:

  1. 処理品が殺生物特性(訳注:殺菌性や防カビ性, 防虫性)を持っていると宣伝文句を使うとき、
  2. 物品の処理に使用したバイオサイド製品中に含まれる活性成分の承認条件として、表示ラベルが求められている場合.

その表示ラベルは消費者に分かりやすく見やすく表示する必要があります.

処理品に対する経過措置

バイオサイド製品規則(BPR)には、旧バイオサイド製品指令からBPRへの移行をしやすくするための措置がたくさん用意されています.

2013年9月1日から、物品処理に使用するバイオサイド製品中の活性物質は、それが関連する製品タイプについて、すでに承認されているか、また評価中でなければなりません.

まだ承認プロセス中でない活性物質に対しては、2016年9月1日までの経過期間があります.処理品がすでに2013年9月1日の時点で既にEU市場にある場合には、継続して市場での販売を続けるために、企業は2013年9月1日までに、活性物質に関する全申請書類を提出する必要があります.活性物質書類は、関連製品タイプについてのデータが含まれていなければなりません.

もし活性物質が関連製品タイプについて承認されなかった場合は、この活性物質を含むバイオサイド製品で処理した、あるいは、組み込んだ物品は、その活性物質非承認の決定後180日目からはもはや販売できなくなります.

補足

バイオサイド製品規則(BPR)の規定するbiocidal treated article(バイオサイド処理品) の article(物品)であっても、REACH規則のarticle(物品)でないものがあります.バイオサイド処理規則にいうバイオサイドで処理した物品(処理品)には、物質(substance), 混合物(mixture), 物品(article)があると規則自身が言っています(BPR 第2条 1 (l) ).

物品(article)の基本的な意味がREACH/CLP/BPRで異なるわけではありません.

articleの一般的な意味は、

an individual object, member, or portion of a class; item: an article of clothing (Random House Kernerman Webster’s College Dictionary, Android版 ver1.0.8)

つまり、同種の物、構成要素、部分の一つであり、品物、品、物品、商品などを意味します.例えば、an article of clothingで一点の衣料品です.

あるいは、

an item for sale; commodity. (同上)

つまり、販売品、商品、物品です.

バイオサイド製品規則の”article”の意味は、この一般的な意味といってよいでしょう.先ほど言いましたように、バイオサイド処理規則にいうバイオサイドで処理した物品(処理品)には、物質(substance), 混合物(mixture), 物品(article)があると規則自身が言っています.

EU化学品の規制規則 REACHやCLPでは物品を物質や混合物から区別する必要がありました.そのために、物品の意味は、より限定(define)されています.

大筋簡単に言えば、REACHでは、登録すべきなのは物質であって、物品ではないとする必要がありますし.REACH SDS作成やCLP表示ラベルが必要なのは、物質や混合物であって、物品でないとする必要があります.ただし、REACHでは物品に関する規制も持っています.たとえば、化学品安全評価書における、物品使用取扱(service life)での消費者や労働者の物質暴露評価が求められています.

バイオサイド製品 biocidal products (製品)とバイオサイド処理品 treated articles は概念が異なり、法的要件も違います。これを区別する必要があります。しかし、処理品が製品になる場合もあります。これについては、別途このサイトで近いうちに投稿したいと思います。

関連記事

【Chesar 2 翻訳用語集】 物品 article

Agenda 21 19章を読む - 2 –

この記事は、Agenda 21ページの続きです。今回は19章第1節を読み終えます。Agenda 21 19章第1節には19章全体の話題が提示され、話の展開が暗示されています。

前回も言いましたがAgenda 21の19章は工業化学品やバイオサイド等の化学品、そしてそれを使った物品(article ー成形品とも訳されている)に対する今日の化学規制の方向性を理解するのに重要です。そこでここではAgenda 21 19章を丁寧にゆっくりと読んで、わかりやすい訳をつけ、さらに、解説を何回かに分けて書くことにしています。

Agennda 21 19章の最初の二文では、21世紀の持続可能な発展、人の生活の向上というAgenda 21の全体の大きな課題のもとで、環境の観点から化学品をうまく管理すること(化学品健全管理)が必要であり、それについて19章で記載されていることが暗示されていました。

1. 翻訳

では前回の冒頭の2文に続き、第1節のすべてを訳すことにします。

Agenda 21 – Chapter 19

ENVIRONMENTALLY SOUND MANAGEMENT OF TOXIC CHEMICALS, INCLUDING PREVENTION OF ILLEGAL INTERNATIONAL TRAFFIC IN TOXIC AND DANGEROUS PRODUCTS

有害化学品の環境にとって健全な管理―有害で危険な製品の不正国際取引防止を含めて―

19.1. A substantial use of chemicals is essential to meet the social and economic goals of the world community and today’s best practice demonstrates that they can be used widely in a cost-effective manner and with a high degree of safety. However, a great deal remains to be done to ensure the environmentally sound management of toxic chemicals, within the principles of sustainable development and improved quality of life for humankind. Two of the major problems, particularly in developing countries, are (a) lack of sufficient scientific information for the assessment of risks entailed by the use of a great number of chemicals, and (b) lack of resources for assessment of chemicals for which data are at hand.

19.1 化学品の多用は世界の共同体の社会的経済的目的を達成するために不可欠です。今日、もっともうまくいっている事例によって、化学物質は費用効果のある方法で、そして、非常に安全な方法で広く使用できることが明らかになっています。しかしながら、持続可能な発展と人の生活の質の向上という理念のもとで、環境にとって有害な化学物質を健全に、確実に管理するためにはやらなければならないことがまだたくさんあります。大きな問題が二つあります。 特に発展途上国で問題です。 a) 一つは多種類の化学品を使用することによってもたらされるリスクを評価するための科学的な情報が十分でないということであり、b) 今一つはデータが手元にあっても化学品の評価をするための資源が足らないということです。

2. 二つの課題

課題が二つあるといっています:

a) 化学品の使用取扱に伴うリスクを評価するための科学情報の不足と b) データがあってもそれを評価するための資源の不足です。 それらが、発展途上国で顕著であるといっているわけです。

この段落の理解のポイントとして二つ挙げます:

  1. aでは、「化学品の科学的情報が足りない」と言っているのではなく、「化学品の使用取扱いによってもたらされるリスクを評価するための科学的情報が足りない」言っていることです。
  2. bでは、「資金が足りない」といっているのではなく、「資源が足りない」と言っているということです。

3. 情報不足―化学品の使用取扱いによってもたらされるリスクを評価するための科学的情報の不足

aでは、「化学品の使用取扱」による悪い影響がもたらされる可能性(リスク)がどんなものであるか理解するのに必要な情報が足りないと言っているのであって、単に化学品の情報が足りないと言っているのではないということです。

その情報とは、人や環境に及ぼす、化学品の使用取扱によって引き起こされるリスクを評価するために必要なものだというのです。

ある化学品が人や環境に悪い結果をもたらすのは単にその化学品の危険性(ハザード)によって決まるわけではなく、その化学品をどのように使うかで決まります。 たとえば、誰もが人にとって安全で有害でないと思っている水ですら、過剰な摂取により水中毒(water intoxication, water poisoning)と呼ばれる症状を引き起こします。東京マラソンの公式のサイトでランナーに水の摂取不足による熱中症とともに過剰摂取による水中毒に注意を呼び掛けています(http://www.tokyo42195.org/marathonman2013/healthcare_bn01.html)。

つまり、どんなものであれ、適切に取り扱わなければ危険である、リスクがあるということです。 後に具体的に述べられていますが、製造国では許可されていない使用取扱いが発展途上国で実施されていることについて言っています。つまり、特に発展途上国では 安全な使用取扱いの情報(リスクのある使用取扱い情報の裏返しですが)が不足しているということです。

無論、その化学品が持つ本質的な危険性(又は有害性)、ハザード情報もまた重要です。 その化学品が本質的に潜在的にどのような影響を与える可能性があるかによって、安全な使用取扱いの範囲が決まってくるわけですから。 このハザード情報についても後に具体的に述べられています。

4. 資源不足―化学品の使用取扱いによって引き起こされるリスクを評価するための資源の不足

bでもう一つ不足しているとしているのが、化学品の使用取扱リスクを評価するための資源です。 このことについてはAgenda 21 19章の後ろの方で詳しく述べられることになります。

ここで単語resourceの意味するものに注意が必要です。 これは「資源」のことで、「資金」に限りません。そう訳してしまうとこの後の文を理解できません。

もともとresource(資源)の意味は何でしょうか。 例えばoxford dictionaryでは次のように記載されています:

“(usually resources) a stock or supply of money, materials, staff, and other assets that can be drawn on by a person or organization in order to function effectively:local authorities complained that they lacked resources” http://www.oxforddictionaries.com/definition/english/resource?q=resource

つまり、「人や組織が効果的に機能を果たすために、あてにできるお金や材料、職員などであって、備えや補給品で後に役立つもの」というわけです。例文は、「地方当局は自分たちには使えるもの(資源)がないと不満を述べた」というわけです。

P.F. Drucker (Management: Tasks, Responsibilities, Practices. Haper Collins e-books, 第4章 Dimensions of Management, 1 Purpose and Mission, Paragraph 6)もこう言っています:

“The second task of management is to make work productive and the worker achieving. Business enterprise (or any other institution) has only one true resource: man.

「管理(management –経営と訳してもよい)の二番目の機能はその機構の作業の生産性を高め、そこで働く者が成就できるようにすることである。 企業(あるいは、いかなるほかの機構であれ)それが持つ真の資源は「人」だけである。

Agenda 21では、後で読むことになりますが、19.21 (c)では、Human resource development (人的資源開発–つまり人材の育成)の必要性を指摘しています。 化学品の良い管理(sound management)のためには、人が資源として重要で、あてにできる人材が不足していて、その育成が必要だといっているわけです。

次回は19.2で現在の課題について具体的に述べている内容を見てみます。

ECHA IUCLID報告書作成アプリの新バージョンをリリース

2014年1月31日 ECHAはIUCLID報告書作成アプリ(IUCLID Report Generator)の新バージョンをリリースした。

http://iuclid.eu/index.php?fuseaction=home.news&type=public&id=68

新らしくリリースしたIUCLID Report Generator (IUCLID報告書作成アプリ)によって、化学安全アセスメントと報告書作成ツールであるChesarによって生成される曝露アセスメント情報を対応するIUCLIDセクションに取り込むことができる。

この更新版によって、IUCLIDユーザは、Chesarを使用して曝露アセスメントデータを生成すれば、その情報をIUCLID(セクション3.7.1と3.7.2)に出力できる。これを使えば、 IUCLIDとChesarの二つのツールの間でデータを同期させて化学安全報告書全体を生成するのに必要な、様々な手順を踏みやすくなる。

更新された機能についてはリリースノートに記載されている。 本アプリ導入用の説明書(Installation manuals)は導入用パッケージに含まれており、そのパッケージはIUCLIDウェブサイトからダウンロードできる。

この IUCLID報告作成アプリは、REACHにおける化学安全報告書(CSR)の作成を支援し、従来のCSRプラグインに置き換わるものとなる。また、バイオサイド製品認可申請書用の製品特性要約(summary of product characeristics SPC)を申請者が作成するのにも役に立つ。

ECHAは現場で生成するバイオサイド活性物質に関する情報を要求

EUのバイオサイド製品規制(BPR)の範囲に入る、活性物質を生成するバイオサイド製品の上市と使用をしている企業対して、2014年3月31日までに情報提供を呼び掛けている(http://echa.europa.eu/documents/10162/17287015/appoval_active_substances_etter_in_situ_en.pdf)。

現場でバイオサイド活性物質を生成する物質をin-situ generated biocidal active substancesと呼んでいる(訳すと「現場生成バイオサイド活性物質」というところだろうか)。

その現場生成バイオサイド活性物質の例も上記資料付録 II に二群にわけて記載している。それぞれ一部を抜粋すると、

意図的に複数物質を反応させて活性物質を生成させるようなもの: 二酸化塩素を生成する亜塩素酸ナトリウムと塩酸の組み合わせ。

活性物質を、もととなる化学物質や周りにある資源から生成する機器: 大気中の酸素からオゾンを発生させるもの。

【Chesar 2 翻訳用語集】物品 article

【Chesar 2 翻訳用語集】 article 物品

2014.2.5 Biocide関連情報を追加
2014.2.7 Biocide関連情報をさらに追加
2014.2.26 リンクの一部、CLP, オレンジブックを修正。翻訳部分の一部、CLP序文の翻訳をハイライト

1. REACH規則/CLP規則/バイオサイド規則上の用語定義

articleは、REACH規則第3章9とCLP規則第2章9で次のような同じ定義がなされている:

“article: means an object which during production is given a special shape, surface or design which determines its function to a greater degree than does its chemical composition;”

訳すと、
物品(article)は、その外形表面、及び、意匠(デザイン)が製造の過程で決まる物であり、その機能が化学的組成よりも外形表面、及び、意匠によって決まるの物である。

「直訳」では正しく理解できるとは思えないのでここではもとの英文の構造をそのまま日本語にするのではなく、正しく理解されやすいように訳している。

REACH規則とCLP規則で、定義を一致させることについてCLP規則前文(Whereas)にわざわざ記載している(参照 注1)。

1.2 バイオサイド規則中の”article”

1.2.1 バイオサイド規則第3条定義第2項には次のようにある:

2. For the purposes of this Regulation, the definitions laid down in Article 3 of Regulation (EC) No 1907/2006 shall apply for the following terms:
(a) ‘substance’;
(b) ‘mixture’;
(c) ‘article’;
(d) ‘product and process-orientated research and development’;
(e) ‘scientific research and development’.

つまり、REACH規則(Regulation (EC) No 1907/2006 )とバイオサイド規則(Regulation (EC) No 528/2012) のarticleの定義は同じだというわけだ。

1.2.2 また、バイオサイド規則の前文には、

(l) ‘treated article’ means any substance, mixture or article which has been treated with, or intentionally incorporates, one or more biocidal products;

と記載されており、treated article(処理物品)とは、一つ以上のバイオサイド製品で処理されている、すなわち、意図的に組み込まれている、物質(substance)または混合物(mixture)、物品(article)のことというわけだ。 ここで「物品」は「物質」、「混合物」、「物品」の3つの形態に分けていることも注意したい。この三つの区別は、欧州の化学品規制(REACH, CLP, バイオサイド)に共通して概念上、実務上きわめて重要である。

1.2.3 一方、バイオサイドの処理物品(treated article)について、次のような説明も行われている:

Definition of “treated articles” :
— Substance, mixture or article, i.e., not only articles within the meaning of the REACH Regulation

つまり、処理物品は、REACH規制対象となるような物品だけでなく、物質、混合物である場合があるということだ(ECHA 2013 Control of treated articles in Boicidal Products Regulation, ECHA Biocides Stakesholders’ Day, 25 June 2013, p.3)

この記述と1.2.1 又は1.2.2 の記述とは、一見矛盾しているようにも思えるが、次のように考えてみたがどうだろう。

C01 Article
C02 .Substance
C03 ..Mixture

の階層的概念でありその境界にも違いがないことはREACH, CLP, バイオサイドで共通しているが、BPR treated articleの規制対象は、Articleの全階層すなわちC01(+C02+C03)であり、REACH articleの規制対象はC01の階層のみである。定義は違わないが規制対象が違うということだ。

2. 別の訳語

articleの訳語としては物品以外にも次の訳語も多く使われている: 成形品、成型品、アーティクル.

REACHやCLPを理解するのに役にたつ解説書籍・文書はたくさんあるが、訳語が必ずしも一貫していないので欧州の化学規制の初学者はこのことを頭の片隅に置いておく必要があろう。

3. 注

注1 CLP規則前文

CLP規則((EC) No 1272/2008) の前文(Whereas)の(12)には次のようにある:

(12) The terms and definitions used in this Regulation should be consistent with those set out in Regulation (EC) No 1907/2006 of the European Parliament and of the Council of 18 December 2006 concerning the Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals (REACH) ( … ), with those set out in the rules governing transport and with the definitions specified at UN level in the GHS, in order to ensure maximum consistency in the application of chemicals legislation within the Community in the context of global trade. The hazard classes specified in the GHS should be set out in this Regulation for the same reason.

(12) この規則で使用される用語と定義は, 化学物質の登録と評価、認可、制限に関する2006年12月18日の欧州議会と欧州連合理事会の規則(EC) No 1907/2006 (REACH)で規定されている用語と定義、輸送を規制する規則で設定されている用語と定義、GHSにおいて国連レベルで決定されている定義で設定されているものと一致するものとする。 そうする目的は、世界貿易において、共同体内で化学品に関する規則を最大限一貫性をもって適用することである。 GHSで特定される危険有害性クラス同じ理由でこの規則で設定されるものとする。

したがって、CLP規則輸送を規制する規則GHSにおけるarticleの用語や定義は一致するということである。 ここで、輸送規則とは「国際連合経済社会理事会危険物輸送及び分類調和専門家委員会の勧告」(オレンジブック)をおおもととする国際的に調和されている輸送物の規則群のことである。 ただし、具体的には、輸送規則中articleとされるものが、CLP/REACHではarticleでない場合もあるようだ。

注2  訳語 成型品と成形品

日本語の「成形品」や「成型品」は、かならずしも、REACH/CLPのこのarticle (物品)の定義と一致しないので注意が必要である。

国際特許分類

たとえば、国際特許分類 IPC第8版日本語訳には「成形品」という言葉がたくさん出てくる: たとえばIPCコードのサブクラス B29K 、B29Cは、

「成形材料用の組成物;成形品の条件,形態,または状態」

「プラスチックの成形または接合;可塑状態の物質の成形一般;成形品の後処理,例.補修」

となっているが、対応する英語は、

Compositions for moulding materials; Condition, form or state of moulded material

SHAPING OR JOINING OF PLASTICS; SHAPING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE, IN GENERAL; AFTER- TREATMENT OF THE SHAPED PRODUCTS, e.g. REPAIRING

である。 成形品に対応しているのは、”moulded material”, “shaped products”である。

ちなみに、B29C 34/02 には、articleの語が使われていて、その訳語には、「物品」が当てられている:

· of articles of definite length, i.e. discrete articles (WIPO IPC)

その公式の訳語は、

· 一定長の物品,すなわち.不連続物品,の圧縮成形 (特許庁 パテントマップガイダンス)

技術用語辞典

多くの技術用語辞書では「成形品」の語には、moulded (=molded) … の英語しか出てこない。たとえば、Weblioで検索すれば確認できる。

「成形品」の訳語をつかってもよいかもしれないが、読者に誤解のないように解説しておく必要があるだろう。 このmoldには、「成型品」の漢字を適用し、「成形品」と区別するとの見解もあるようだが、多くの文書で、「成形品」と「成型品」が使い分けられているとは思えないことが多い。

2013.12.17 ECHA バイオサイドの新しい手引き公開

2013/12/17 ECHAはバイオサイド(殺生物剤)に関する新しい手引き Guidance for Human Health Risk Assessment を公開した。

バイオサイドに関するガイダンスシリーズの第三巻パートBに位置づけられる。

人健康リスクアセスメントに関するバイオサイド活性物質とバイオサイド製品に対するハザードアセスメント(hazard assessment)、曝露アセスメント(exposure assessment)、そして、リスク特性記述(risk characterisation)を実施する方法に関する技術的アドバイスが記載されている。


訳語について

hazardは、危険性、有害性、危険有害性、ハザードなどとさまざまに訳し分けられている。 欧州化学品規制の文脈の上で訳しわける意味はほとんどない。 danger(ous)とhazard(ous)の両方の語がCLP規則上で使われているが、この両者CLP規則上で歴史的な意味以上の差があるわけではない。 参照: Dangerous と Hazardous

assessmentは、評価と訳されている場合もある。 ただ、risk assessmentとは定義の異なるrisk evaluationという言葉もあり、混同を避けるためにrisk assessmentをリスク評価とせずにリスクアセスメントとしている場合があり、このブログではできるだけassessmentにはアセスメントの訳語を当てている。

risk characterisation (= risk characterization ) は、リスク特性化、とか、リスク判定と訳されている場合が多い。 ただ、リスクの特性を明らかにする作業だけでなく、明らかにしたものを記述して、場合によれば、作成した文書まで含むこともあるので、このブログではリスク特性記述と訳している。

2013年9月1日 バイオサイド規則運用開始

ECHA News Letter ECHA/PR/13/32 によると,2013/09/1にバイオサイド規制の運用が開始された.

新しいバイオサイド規則は,有害な生物から人や動物,材料,物品を保護するために使用される,バイオサイド製品の販売(上市)と使用取扱に関する規則である. この規則の目的は,人健康と環境の高度の保護を確実なものとしつつ,EU内でのバイオサイド製品市場の機能を高めることにある.ECHAはこの新しい規則における全プロセスにおいて中心的な役割を果たす機関である.

9月1日以降, 産業界は活性バイオサイド物質の承認と,承認された活性物質を含むバイオサイド製品の認可とを ECHAに申請することができる.

この規則ではバイオサイド製品の認可に新しい方法が導入されている. 企業は,これまでのようにEU加盟国一国にへの認可申請に加えて,複数の加盟国に同時に申請したり,EU全体に対する認可申請をしたりできる.ある種のバイオサイド製品についてはその認可プロセスは単純化されている.

規則の目的のひとつは,不必要な動物試験を避けることにある.そのため,動物試験はすべて実施するまえに,企業はECHAに問い合わせを行って,EUバイオサイド制度に基づいて同じ試験や研究が既に実施及び提出がされていないかを調べる必要がある.そのような情報がある場合にはそのデータを共有することが求められている.この規則は,また,活性バイオサイド物質のアセスメントのコストを複数の申請者で確実に平等に分担されるようにしている.このレビュープログラムや認可された活性物質の元の申請に関わらなかった者であっても,活性物質を販売(上市)したことのある活性物質の製造者及び輸入者であれば,このコストの負担が求められる.ECHAはアセスメント・コストを負担した活性物質供給者リストを保管管理する.そして,そのリストに載っている供給者から供給を受けた活性物質を含むバイオサイド製品は2015年9月1日からも市場に残る権利を法的に持つことになる.その供給者のリストはECHAウェッブサイトで公表される.

ECHA長官Geert Dancet は次のように言っている.「ECHAは昨年この重要な新しい規則の運用を開始できるように基本的な要素を整えるために懸命に取り組んできた.準備段階では,この新しい法律に対応しなければならない欧州の中小の多くの企業のことを心に留めていた.すべての企業がこの規則を遵守できるように多くの材料を提供しているし今後も提供して行くつもりである.それらの中には,文書やウェビナ,教材用ビデオ,取扱説明書,FAQ, バイオサイドステークホルダデイなどがある.ECHAのヘルプデスクと加盟各国の担当機関は,業界からの質問に応える用意ができている.

バイオサイド製品の全く新しい登録サイト(R4BP 3)も利用できるようになる.そのサイトは,それを通じてバイオサイドの申請のすべてが実施される中心的なハブとなる.そのサイトは業界と当局担当部署が法的要件を満たし,相互に情報を交換できるようにする機能も持っている.このシステムは9月1日午前9時 (ヘルシンキ時間)に公式に運用開始される.その時点から企業は認可申請書を電子的に提出することができる.ECHAはまたR4BP 3を使用して,申請がうまくいくように取扱説明書とテンプレートを提供する,SMEには手続きに伴う費用減額のメリットがある.

企業はIUCLID5を使用して,活性物質とバイオサイド製品に関する技術的化学的データを収集し,構成し,保管しなければならない.申請のために,企業はIUCLID 5ドシエ(書類)を作成し,R4BP 3システムを通じてECHA又は各国担当部署に提出することができる.

バイオサイド製品規則のための準備も整ったIUCLID

ECHAは2013/4/2付で新しいIUCLID5.5のリリースのニュースECHA/NA/13/14を発表しました.

仮訳

バイオサイド製品規則のための準備も整ったIUCLID

ECHA/NA/13/14

IUCLID5の新版が発表された. 2013年9月1日に運用が開始される新しいバイオサイド製品規則の準備に取りかかっている申請者は自分のデータをIUCLID書式へ構成に変換する作業を今から始めることができる.

続きを読む “バイオサイド製品規則のための準備も整ったIUCLID”

ECHA 2013/2/11 ECHA-term でBiocideの用語

ECHAは2013年2月11日 ECHA-Termサイトに2013年9月から実施されるバイオサイド規則から50語の用語を追加。http://echa.cdt.europa.eu/SearchByQueryLoad.do?method=load

このサイトではREACH, CLPの重要用語及びSVHC物質の名称も検索語として使用できる。

関連情報:
使い方を示したパンフレット:

クリックしてecha_2011_00330000_en.pdfにアクセス

ECHAのECHA-term開設の案内パンフレット

クリックしてecha_2011_00320000_en.pdfにアクセス