REACH上、物品、混合物は物質でない

EU域内での製造される物質(Substance)、又は、EU域内に輸入される物質は、REACH規則に基づいいて、製造業者、輸入業者ごとに登録が多くの場合求められる。

しかし、REACH上は、Article(物品。しばしば、成形品とも訳されている)はMixture(混合物)とともに、Substance(物質)でないので、登録の対象とならない。登録対象が何かの理解には、この「物質」、及び、「物品」の意味をREACH/CLPフレームワークとして理解する必要がある。

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バイオサイド処理品

この文書は、ECHAの次のページの参考訳です.後半に若干の補足をしています.

ECHA > Regulations > Biocidal Products Regulation > Treated articles

ここの訳文では、treated article は、(バイオサイド製品で)処理した物品 =(バイオサイド製品での) 処理品 と訳しています.

処理品 (Treated articles)

バイオサイド製品規則(Biocidal Products Regulation, BPR)には、一つ以上のバイオサイド製品で処理された物品、又は、意図的に組み込まれた物品の使用取扱いに対しての決まりがあります.

バイオサイド製品規則に従って、物品はEUで承認された活性物質を含むバイオサイド製品でのみ処理することができます.これは、旧バイオサイド製品指令(2013年9月1日からBPRにより失効)からの変更点です.旧指令では第三国からの輸入品はEUで承認されていない物質での処理が可能でした.例えば、ヒ素で処理した木材やDMFを含むソファーや靴.

企業は、販売する物品のバイオサイド処理について情報を、消費者にすぐに提供できるようにしておかなければなりません.消費者が処理物品について情報を求めてきた場合、その物品の供給者は45日以内に無償でその情報を提供しなければなりません.

処理品の表示ラベル (Labelling of treated articles)

処理品の製造者または輸入者は製品ラベルについて、分類、表示、及び、包装に関する規則(CLP規則)と、バイオサイド製品規則によって定義される追加的な要件に正しく従っている必要があります.

処理品の製造及び輸入者が、処理品を、バイオサイド製品規則(BPR)に従って、表示ラベルする必要があるのは次のような場合です:

  1. 処理品が殺生物特性(訳注:殺菌性や防カビ性, 防虫性)を持っていると宣伝文句を使うとき、
  2. 物品の処理に使用したバイオサイド製品中に含まれる活性成分の承認条件として、表示ラベルが求められている場合.

その表示ラベルは消費者に分かりやすく見やすく表示する必要があります.

処理品に対する経過措置

バイオサイド製品規則(BPR)には、旧バイオサイド製品指令からBPRへの移行をしやすくするための措置がたくさん用意されています.

2013年9月1日から、物品処理に使用するバイオサイド製品中の活性物質は、それが関連する製品タイプについて、すでに承認されているか、また評価中でなければなりません.

まだ承認プロセス中でない活性物質に対しては、2016年9月1日までの経過期間があります.処理品がすでに2013年9月1日の時点で既にEU市場にある場合には、継続して市場での販売を続けるために、企業は2013年9月1日までに、活性物質に関する全申請書類を提出する必要があります.活性物質書類は、関連製品タイプについてのデータが含まれていなければなりません.

もし活性物質が関連製品タイプについて承認されなかった場合は、この活性物質を含むバイオサイド製品で処理した、あるいは、組み込んだ物品は、その活性物質非承認の決定後180日目からはもはや販売できなくなります.

補足

バイオサイド製品規則(BPR)の規定するbiocidal treated article(バイオサイド処理品) の article(物品)であっても、REACH規則のarticle(物品)でないものがあります.バイオサイド処理規則にいうバイオサイドで処理した物品(処理品)には、物質(substance), 混合物(mixture), 物品(article)があると規則自身が言っています(BPR 第2条 1 (l) ).

物品(article)の基本的な意味がREACH/CLP/BPRで異なるわけではありません.

articleの一般的な意味は、

an individual object, member, or portion of a class; item: an article of clothing (Random House Kernerman Webster’s College Dictionary, Android版 ver1.0.8)

つまり、同種の物、構成要素、部分の一つであり、品物、品、物品、商品などを意味します.例えば、an article of clothingで一点の衣料品です.

あるいは、

an item for sale; commodity. (同上)

つまり、販売品、商品、物品です.

バイオサイド製品規則の”article”の意味は、この一般的な意味といってよいでしょう.先ほど言いましたように、バイオサイド処理規則にいうバイオサイドで処理した物品(処理品)には、物質(substance), 混合物(mixture), 物品(article)があると規則自身が言っています.

EU化学品の規制規則 REACHやCLPでは物品を物質や混合物から区別する必要がありました.そのために、物品の意味は、より限定(define)されています.

大筋簡単に言えば、REACHでは、登録すべきなのは物質であって、物品ではないとする必要がありますし.REACH SDS作成やCLP表示ラベルが必要なのは、物質や混合物であって、物品でないとする必要があります.ただし、REACHでは物品に関する規制も持っています.たとえば、化学品安全評価書における、物品使用取扱(service life)での消費者や労働者の物質暴露評価が求められています.

バイオサイド製品 biocidal products (製品)とバイオサイド処理品 treated articles は概念が異なり、法的要件も違います。これを区別する必要があります。しかし、処理品が製品になる場合もあります。これについては、別途このサイトで近いうちに投稿したいと思います。

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1. REACH規則/CLP規則/バイオサイド規則上の用語定義

articleは、REACH規則第3章9とCLP規則第2章9で次のような同じ定義がなされている:

“article: means an object which during production is given a special shape, surface or design which determines its function to a greater degree than does its chemical composition;”

訳すと、
物品(article)は、その外形表面、及び、意匠(デザイン)が製造の過程で決まる物であり、その機能が化学的組成よりも外形表面、及び、意匠によって決まるの物である。

「直訳」では正しく理解できるとは思えないのでここではもとの英文の構造をそのまま日本語にするのではなく、正しく理解されやすいように訳している。

REACH規則とCLP規則で、定義を一致させることについてCLP規則前文(Whereas)にわざわざ記載している(参照 注1)。

1.2 バイオサイド規則中の”article”

1.2.1 バイオサイド規則第3条定義第2項には次のようにある:

2. For the purposes of this Regulation, the definitions laid down in Article 3 of Regulation (EC) No 1907/2006 shall apply for the following terms:
(a) ‘substance’;
(b) ‘mixture’;
(c) ‘article’;
(d) ‘product and process-orientated research and development’;
(e) ‘scientific research and development’.

つまり、REACH規則(Regulation (EC) No 1907/2006 )とバイオサイド規則(Regulation (EC) No 528/2012) のarticleの定義は同じだというわけだ。

1.2.2 また、バイオサイド規則の前文には、

(l) ‘treated article’ means any substance, mixture or article which has been treated with, or intentionally incorporates, one or more biocidal products;

と記載されており、treated article(処理物品)とは、一つ以上のバイオサイド製品で処理されている、すなわち、意図的に組み込まれている、物質(substance)または混合物(mixture)、物品(article)のことというわけだ。 ここで「物品」は「物質」、「混合物」、「物品」の3つの形態に分けていることも注意したい。この三つの区別は、欧州の化学品規制(REACH, CLP, バイオサイド)に共通して概念上、実務上きわめて重要である。

1.2.3 一方、バイオサイドの処理物品(treated article)について、次のような説明も行われている:

Definition of “treated articles” :
— Substance, mixture or article, i.e., not only articles within the meaning of the REACH Regulation

つまり、処理物品は、REACH規制対象となるような物品だけでなく、物質、混合物である場合があるということだ(ECHA 2013 Control of treated articles in Boicidal Products Regulation, ECHA Biocides Stakesholders’ Day, 25 June 2013, p.3)

この記述と1.2.1 又は1.2.2 の記述とは、一見矛盾しているようにも思えるが、次のように考えてみたがどうだろう。

C01 Article
C02 .Substance
C03 ..Mixture

の階層的概念でありその境界にも違いがないことはREACH, CLP, バイオサイドで共通しているが、BPR treated articleの規制対象は、Articleの全階層すなわちC01(+C02+C03)であり、REACH articleの規制対象はC01の階層のみである。定義は違わないが規制対象が違うということだ。

2. 別の訳語

articleの訳語としては物品以外にも次の訳語も多く使われている: 成形品、成型品、アーティクル.

REACHやCLPを理解するのに役にたつ解説書籍・文書はたくさんあるが、訳語が必ずしも一貫していないので欧州の化学規制の初学者はこのことを頭の片隅に置いておく必要があろう。

3. 注

注1 CLP規則前文

CLP規則((EC) No 1272/2008) の前文(Whereas)の(12)には次のようにある:

(12) The terms and definitions used in this Regulation should be consistent with those set out in Regulation (EC) No 1907/2006 of the European Parliament and of the Council of 18 December 2006 concerning the Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals (REACH) ( … ), with those set out in the rules governing transport and with the definitions specified at UN level in the GHS, in order to ensure maximum consistency in the application of chemicals legislation within the Community in the context of global trade. The hazard classes specified in the GHS should be set out in this Regulation for the same reason.

(12) この規則で使用される用語と定義は, 化学物質の登録と評価、認可、制限に関する2006年12月18日の欧州議会と欧州連合理事会の規則(EC) No 1907/2006 (REACH)で規定されている用語と定義、輸送を規制する規則で設定されている用語と定義、GHSにおいて国連レベルで決定されている定義で設定されているものと一致するものとする。 そうする目的は、世界貿易において、共同体内で化学品に関する規則を最大限一貫性をもって適用することである。 GHSで特定される危険有害性クラス同じ理由でこの規則で設定されるものとする。

したがって、CLP規則輸送を規制する規則GHSにおけるarticleの用語や定義は一致するということである。 ここで、輸送規則とは「国際連合経済社会理事会危険物輸送及び分類調和専門家委員会の勧告」(オレンジブック)をおおもととする国際的に調和されている輸送物の規則群のことである。 ただし、具体的には、輸送規則中articleとされるものが、CLP/REACHではarticleでない場合もあるようだ。

注2  訳語 成型品と成形品

日本語の「成形品」や「成型品」は、かならずしも、REACH/CLPのこのarticle (物品)の定義と一致しないので注意が必要である。

国際特許分類

たとえば、国際特許分類 IPC第8版日本語訳には「成形品」という言葉がたくさん出てくる: たとえばIPCコードのサブクラス B29K 、B29Cは、

「成形材料用の組成物;成形品の条件,形態,または状態」

「プラスチックの成形または接合;可塑状態の物質の成形一般;成形品の後処理,例.補修」

となっているが、対応する英語は、

Compositions for moulding materials; Condition, form or state of moulded material

SHAPING OR JOINING OF PLASTICS; SHAPING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE, IN GENERAL; AFTER- TREATMENT OF THE SHAPED PRODUCTS, e.g. REPAIRING

である。 成形品に対応しているのは、”moulded material”, “shaped products”である。

ちなみに、B29C 34/02 には、articleの語が使われていて、その訳語には、「物品」が当てられている:

· of articles of definite length, i.e. discrete articles (WIPO IPC)

その公式の訳語は、

· 一定長の物品,すなわち.不連続物品,の圧縮成形 (特許庁 パテントマップガイダンス)

技術用語辞典

多くの技術用語辞書では「成形品」の語には、moulded (=molded) … の英語しか出てこない。たとえば、Weblioで検索すれば確認できる。

「成形品」の訳語をつかってもよいかもしれないが、読者に誤解のないように解説しておく必要があるだろう。 このmoldには、「成型品」の漢字を適用し、「成形品」と区別するとの見解もあるようだが、多くの文書で、「成形品」と「成型品」が使い分けられているとは思えないことが多い。