国際的にGHS分類に差
日本政府によるGHS分類結果では、塩化水素を呼吸器感作性としている。経済産業省所管の製品評価技術基盤機構(NITE) GHSサイトや、厚生労働省 職場の安全サイトには2018年1月23日現在そのように記載している。これに対して、EUでは塩化水素を呼吸器感作性に分類していないことがECHA(EU化学品庁)のサイトで確認できる(2018/1/23現在)。国や地域によって塩化水素の性質が変わるわけではないから(危険性・有害性は物質固有の性質)、これは、塩化水素の呼吸器感作性の分類基準が国によって異なるということだ。
GHSは分類基準と方法に関する国際合意であるので、分類方法があいまいなのかもしれないし、解釈に違いあるいは問題があるのかもしれない(これについては近い将来議論する)。もっとも、GHS上、国際輸送危険物の分類結果とは異なりGHS分類結果そのものは、各国の案件であるので、結果が異なることはGHSに反することではない。
国内的に分類に差
日本では、試薬として塩化水素の水溶液である塩酸を販売している大手試薬メーカが、そして、一部の最大手化学会社でも、塩酸のSDS中で、GHS分類として呼吸器感作性としている。一方、塩酸の主要製造メーカーは、軒並み塩化水素及び塩酸を呼吸器感作性に分類していない―軒並みそうなのはソーダ業界として標準SDSを作成しているためだ。もっとも、日本のGHSの法的実装では、政府による分類結果に企業は従わなくてもよく、また、各企業の責任になっているので法的には全く問題ない (2018年1月23日現在)。しかし、それを見たユーザは混乱するおそれがある。
続きを読む “塩化水素(塩酸)は呼吸器感作性か? ―1.現状” →