欧州化学物質庁(ECHA)は、2012年6月28日 川下ユーザ向け、曝露シナリオの取扱の実践ガイド (Practical guide 13: How downstream users can handle exposure scenarios)を発行しました。
http://echa.europa.eu/view-article/-/journal_content/41581066-2a03-4298-8b85-1b4b0b66556d
この実践ガイドの目的は、化学物質の製造者及び輸入者の商流川下にいるその物質の使用取扱者(川下ユーザ)が曝露シナリオに関する義務を果たすのを支援することであるとしています。 欧州ではREACH規則に基づいて、川下ユーザは受け取ったSDSが、物質それ自身としての、又は混合物中の物質しての、その川下ユーザの使用取扱(use)と使用取扱条件をカバーしているかをチェックすることが求められています。使用取扱(use)と使用取扱条件をSDSがカバーしていない場合にはいくつかのアクションをとることが必要です。
この実践ガイドはそのためのものです。どのようにチェックすればよいのか。そしてどのようなアクションをとればよいのかという実践的なガイドとなっています。
【解説】
容器から容器への移し替え等もuse
REACHでは使用取扱(use)を次のように定義しています:
“use: means any processing, formulation, consumption, storage, keeping, treatment, filling into containers, transfer from one container to another, mixing, production of an article or any other utilisation;” (REACH規則第3条24項) すなわち、「使用取扱とは、加工、調合、消費、貯蔵、保管、処理、容器への充填、容器から容器への移動、混合、物品の製造、あるいは、その他のすべての利用を意味する」
貯蔵、保管、容器への充填、容器から容器への移動、混合 などは、使用といわれるとピンとこないところがありますから、「使用取扱」とここではuseを訳しています。訳語が何が適切かはさておき、いずれにしろこのようなものもREACH規制の対象であることに注意が必要です。 たとえば、化学物質を小分けして売る業者であっても、小分けは容器から容器への移動ですからREACH規則の対象であることになります。
REACHは化学物質とその使用取扱の安全を確保することを目的としていますので、「小分け」など容器から容器への移動では人や環境の曝露が多かれ少なかれあり、useの範囲が通常useという言葉から連想される活動よりその範囲が広いのは当然と言えば当然です。
チェックすべき使用取扱には自分の顧客、そのまた、顧客の使用取扱も
チェックすべき「自分の使用取扱」には、自分の顧客及びその川下の使用取扱、そして消費者の使用取扱も含まれています。 たとえば、自分が購入したアルコールを他の化学物質と配合(formulation)して洗浄殺菌剤あるいはインクを製造し、機械業界に納めているとします。 その時には、「自分の使用取扱」には、その機械業界での洗浄殺菌剤あるいはインク(混合物)中の物質としての、使用取扱についても含めて考えなければならず、それらについてもSDSに包含されているかチェックすることが必要です。また、その機械業界が一般向け機械製品にそれを組み込み、消費者向けに販売しているときにはその消費者の使用取扱―たとえば家庭用洗浄殺菌スプレー器による台所の洗浄殺菌や家庭用プリンタによる印刷など―についてもチェックすることが必要です。