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ChemSaferブログへようこそ

2011年12月31日

このブログは、化学品の安全を守るために必要な情報、特に、欧州のREACH/CLPの情報を提供することを目的としています。

免責: このChemSaferブログサイトでは、細心の注意のもと、可能な限り的確な情報をタイミングよく提供することを心がけていますが、必ずしも常に最新かつ完全に正確な情報であるとは限りません。読者が記事に基づいて実施される行動については、すべて自己責任のもと行ってください。また、各記事は、予告なしに修正・削除する場合があります。すべての問題やトラブルについて、このブログの著者は、責任を負いかねますので、予めご了承くださいますよう宜しくお願い申し上げます。

Danger とHazard [1/2]

2018年3月16日
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以前、Dangerous と Hazardousという記事で書いたように、EUにおける化学物質規制の下では、同じ意味だ。 ここでは改めてそのことを確認したい。まず、それを理解するために必要な三つの要素について簡単に説明する。

CLP/REACH規則(新法)とDSD/DPD指令(旧法)

EUは2006年発行のいわゆるREACH規則と2008年発行のいわゆるCLP規則によって、化学品規制をEU全域に適用される共通の法とし、それを執行する機関としてECHA(欧州化学庁, 欧州化学機関とも訳される)を設置した。それ以前は、DSD指令/DPD指令及びその他の少なくない指令例えばSDS指令と呼ばれる指令に基づいて各国で法制化と執行が行われていた。この移行は先の二法(regulation)の施行から2018年にかけて暫時行われた。

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塩化水素は呼吸器感作性か?―3. 職業・環境アレルギー学会情報

2018年2月23日

要約

政府は現時点で塩化水素を、呼吸器感作性物質、すなわち、免疫機構により特異的に気道過敏反応を引き起こす物質としている。その根拠の一つは、政府の分類の指針に記載されていた日本職業・環境アレルギー学会に2004年に提出された職業性アレルギーの感作性化学物質リスト案文である(日本職業・環境アレルギー学会雑誌. 2004年. 12(1):95-97)。同学会は、2013年と2016年に「職業性アレルギー疾患診療ガイドライン」を刊行した。この書籍は非常に信頼性の高い記述となっている。そこからは塩化水素が外れている。政府の次の分類見直しにおいては、学会案文に代わってこれらの学会の公式ガイドラインを根拠に塩化水素の呼吸器感作性分類を当然外し、非免疫性気道刺激性の考慮として「特定標的臓器毒性(単回ばく露)」の記載の微修正が期待される。

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塩化水素は呼吸器感作性か?―2. 現在の呼吸器感作性分類根拠の問題点

2018年1月27日

塩化水素は呼吸器感作性ではない

要約

塩化水素は呼吸器感作性に分類できない。政府が2015年に実施したGHS分類で、呼吸器感作性に分類している根拠は、 1)日本職業・環境アレルギー学会の分類、2) ACGIHが文書に記載している塩化水素への暴露の症例である。しかし、1) 同学会は現時点では塩化水素を呼吸器感作性に分類していないし(日本職業・環境アレルギー学会監修 (2016) 職業性アレルギー疾患診療ガイドライン2016)、2) ACGIHもその暴露症例でもって(呼吸器)感作性に分類していない(ACGIH 2003 TLV® and BEI® based on the Documentation of the Threshold Limit Values for Chemical Subastances and Physical Agents & Biological Exposure Indices 2003 とそのHClに関するDocument, ACGIH 2000)。その暴露事例の原論文でもその症例を「非感作性」への分類を提案している(Boulet, L. P. (1988). Increases in airway responsiveness following acute exposure to respiratory irritants: reactive airway dysfunction syndrome or occupational asthma?. Chest, 94(3), 476-481.)。

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塩化水素(塩酸)は呼吸器感作性か? ―1.現状

2018年1月23日

国際的にGHS分類に差

日本政府によるGHS分類結果では、塩化水素を呼吸器感作性としている。経済産業省所管の製品評価技術基盤機構(NITE) GHSサイトや、厚生労働省 職場の安全サイトには2018年1月23日現在そのように記載している。これに対して、EUでは塩化水素を呼吸器感作性に分類していないことがECHA(EU化学品庁)のサイトで確認できる(2018/1/23現在)。国や地域によって塩化水素の性質が変わるわけではないから(危険性・有害性は物質固有の性質)、これは、塩化水素の呼吸器感作性の分類基準が国によって異なるということだ。

GHSは分類基準と方法に関する国際合意であるので、分類方法があいまいなのかもしれないし、解釈に違いあるいは問題があるのかもしれない(これについては近い将来議論する)。もっとも、GHS上、国際輸送危険物の分類結果とは異なりGHS分類結果そのものは、各国の案件であるので、結果が異なることはGHSに反することではない。

国内的に分類に差

日本では、試薬として塩化水素の水溶液である塩酸を販売している大手試薬メーカが、そして、一部の最大手化学会社でも、塩酸のSDS中で、GHS分類として呼吸器感作性としている。一方、塩酸の主要製造メーカーは、軒並み塩化水素及び塩酸を呼吸器感作性に分類していない―軒並みそうなのはソーダ業界として標準SDSを作成しているためだ。もっとも、日本のGHSの法的実装では、政府による分類結果に企業は従わなくてもよく、また、各企業の責任になっているので法的には全く問題ない (2018年1月23日現在)。しかし、それを見たユーザは混乱するおそれがある。

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​アジェンダ 21  四半世紀

2017年6月5日

ちょうど四半世紀前

ちょうど四半世紀前の1992年6月3日から7日、ブラジルのリオデジャネイロで開催された国連主催の最初の地球サミットでは、183カ国の参加の下、化学物質の安全―環境保全を含む―の課題とそれへの対策が、その宣言 agenda 21 ―21世紀計画―の19章として盛り込まれました。

バブル崩壊と環境基本法

1992年というと金満日本―バブルの崩壊がすでに始まってはいたものの、人々にはその自覚はなく、経済もすぐには盛り返すだろうと考えていという時代です。1990年に株価が暴落し、翌1991年には地価が暴落しました(朝日クロニクル20世紀)。一方、その頃、環境基本法が1993年11月12日に成立しました。

アジェンダ21 19章 冒頭 ― 要約

アジェンダ 21 第19章のタイトルは、 “Environmentally Sound Management of Toxic Chemicals, Including Prevention of Illegal International Traffic in Toxic & Dangerous Products” です(国連 1992)。

その冒頭のパラグラフは次のように言っています。
19.1 A substantial use of chemicals is essential to meet the social and economic goals of the world community and today’s best practice demonstrates that they can be used widely in a cost-effective manner and with a high degree of safety. However, a great deal remains to be done to ensure the environmentally sound management of toxic chemicals, within the principles of sustainable development and improved quality of life for humankind. Two of the major problems, particularly in developing countries, are (a) lack of sufficient scientific information for the assessment of risks entailed by the use of a great number of chemicals, and (b) lack of resources for assessment of chemicals for which data are at hand.

これは、19章の要約といってよい。agenda 21は英文の典型的な構造をとっています。

世界の社会的経済的目標に不可欠: 化学品の大量の使用

この文頭の A substantial use of chemicals についての外務省と環境庁監修の仮訳は、「化学品の実質的使用」ですがこれでは意味不明です。 実際のところ、この意味は、「化学品の大量の使用」のことです。 大量と言っても過剰でなく十分な量です。実際、化学物質の恩恵を受けない貧困な人々は地球上にはあまたいることを誰も否定できません。蚊によって媒介される病気、いわゆる日本脳炎の蔓延を防ぐために広く日本でも使用されたDDTは、日本では現在製造・使用禁止ですが、アフリカ諸国等では現在でも、マラリア防止のために使用され、奨励さえされているという、一見矛盾した現実を踏まえなければなりません。Agenda 21は実は国際的な貧困対策も大きなテーマでした。

RandamHose EEdictにおける筆頭の説明は、substantial は、”of ample or considerable amount, quantity, size, etc” (RandamHouse EEdict) 筆頭です。
「化学品を大量に使用することは、世界の共同体の社会的経済的目標を満たすのに不可欠であり、コスト効率の良い方法で、高い安全性の下で広く使用できることが最良の実践により証明されている。」

安全に化学物質が使用されている最良の実践例 Best Practice もあるわけです。多くは、先進国でそれが制度的にも実際的にも問題を含みつつも実現しており、発展途上国がキャッチアップできるようにする必要があるわけです。そして、そのために、日本もまた先進国の一員として、政府関係者も化学業界関係者もお金と人材と物資と情報等々を、それらの国のためにも提供しているわけです。中国などは、制度的には特にEUの規則を導入しており―現実にそれが適用されているかは別の問題としてありますが―急速にキャッチアップを図っています。これには、おそらく、EUが多くのものを、自身の戦略をもって提供しているという背景もあるでしょう。

原理として謳われているのが、「持続的開発と人の生活の質の向上」 sustainable development and improved quality of life for humankind. です。持続的発展とか開発とか、サステイナビリティなどという言葉をよく見かけるようになったのはこれを前後してではないでしょうか。

次の一文で、二つの解決されるべき、主要な問題がある、特に発展途上国でと言っています。(a) 多種類の化学物質を使用するのに伴うリスクを評価するために必要な科学的情報が欠けている。(b) 手元にデータがある化学物質を評価する”resources”が欠けている。

課題: resources  「する」の欠落

ここでいう、resources とはなんでしょう。何が欠けているのでしょう。 この “resource”の訳語としてまず思い浮かぶのは、おそらく誰しも「資源」ですが、資源というと、鉱物資源しか思い浮かべないことを懸念したか、より大きな予算を得るためか、金満日本の世相を反映してか「資金」と、外務省と環境庁監修の仮訳ではなっています。しかし、この意味は、簡単に言えば「人・金・物」です。資金も必要ですが、人的資源も、物的資源も必要だというわけです。

resource という言葉を、英語辞書、英英辞典では次のように説明しています;
Resource とは、”a source of supply, support, or aid, esp. one that can be readily drawn upon when needed” (RandamHouse EEdict)、供給、支援、援助の源泉、特に、必要な時に簡単に引き出せるもの。

また、”A stock or supply of money, material, staff, and other assets that can be drawn on by a person or organization in order to function effectively” (Oxford Living dictionaries https://en.oxforddictionaries.com/definition/resource) 人や組織が効果的に機能するために、引き出すことができる、資金、物資、人員、そして、その他のプラスになるものを、準備しておくこと、または、供給すること。

実際、Agenda 21 の、その後の章でより具体的にそれらのことを展開して述べるという構造をしてます。最初に結論を述べ後でその具体的な内容を書くという構造化された文書の典型です。

実際、Agenda 21は、課題解決のためとして挙げている六つのプログラムの多くに対する具体的手段 Means of implementation として、(a) Financial and cost evaluation 資金とコスト評価 ととともに、(b) Scientific and technological mean 科学技術的手段、(c)  Human resource development, 人材開発、(d) Capacity-building 能力開発―この言葉は実際には限定的に発展途上国向けに使われることが多いようです―を挙げています。 これは、みな、冒頭のResources の具体的内容です。したがって、Resourcesの意味は、これらの具体的内容を一言で要約的に言った resource 「資源」、「なにかに資する源」なわけです。

国語辞書の「資源」

「資する金」、「資する財産」、「資する物」そして、「資する人」、「資する道具」、「資する情報」なわけです。つまり、資金、資産、物資、資材等々、さらに人材、人的資源なわけです。資人と言いたいところですが、これは日本語では別の限定的な意味なので使えません。

「資源」を、国語辞典で見ると、「産業の原料や材料になる物質。…地下―、人的―」(新明解国語辞典). この説明では resource に十分対応した言葉とは言えません。「自然から得られる生産に役立つ要素。… 地下資源・水資源・…人的資源…」(大辞林). なんで産業に限定しているのでしょう。「生産活動のもとになる物質… 地下―、人的―」(広辞苑)などとなっており、なぜか、「産業に資する…」に限定されてしまっている。resouce は、何に資するかはもっと緩い限定しかされていません。各種調べた限り、resource の訳語としてぴったりくるものはない、resource の概念を的確に表している単語はないように思えます。

もっとも的確に表しているのは、いわゆる、「人・金・物」です。しかし、多くは、「経営は…」という文脈で語られるので似たりよったりです。仕方がないので、辞書に記載されている意味を拡張したうえで「資源」と訳しておくのがよいでしょう。resource の意味を端的に表す一語が別にあればそれに置き換えることにします。あるいは、国語辞書学者が「資源」の意味を拡張して記載してくれることを期待することにします。

参照
国連 (1992) Agenda 21 https://sustainabledevelopment.un.org/content/documents/Agenda21.pdf (2017/06/04 閲覧)
厚生労働省(2003)  平成15年5月12日 職場における労働者の健康確保のための化学物質管理のあり方検討会 資料2 から

外務省・環境庁19章仮訳  http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/05/s0522-3b19.html#top (2017/06/04 閲覧)
日本化学工業協会 (2011) JCIA REACH Web Site から。 http://www.nikkakyo.org/reach/REACH-IT/ECETOC_TRA.html (2017/06/04 閲覧)

2016/06/21 ECHA 新版Chesar 3.0 リリース

2016年6月22日

 

欧州化学物質庁 ECHA 2016/06/21付で、REACH対応の公式リスクアセスメントとその報告書作成ツールChesarの新版3.0をリリースした。

下記URLから無償でダウンロードして使用できる。ただし完全に使うにはあわせて無償のIUCLID 6.0の導入が必要。

https://chesar.echa.europa.eu/web/chesar/view-article/-/journal_content/56_INSTANCE_M6zz/title/chesar-3-available-for-download

Chesar 3.0  6月21日リリース

2016年5月22日

2016-5-19 ECHA 欧州化学品庁、当初の予定より約2ヶ月遅れではあるが、6/21に、欧州の公式化学物質安全アセスメントと報告書作成ツールの新版 Chesar 3.0をリリースすると発表。
http://echa.europa.eu/view-article/-/journal_content/title/new-version-of-chesar-available-in-june

あわせて同リリース日に開かれる無償のwebinarの申し込み受付を開始した。