バイオサイド製品と処理品

Biocidal products バイオサイド製品とTreated articles 処理品は違った概念です。EUで求められる要件が違います。ただし、処理品がバイオサイド製品になる場合もあります。

以下ここでは、法令等を訳すとき、わかりやすさを第1にしており、より厳密な把握のためには原文に当たられることをお勧めします.

処理品とは

欧州のバイオサイド製品規則(BPR, Regulation (EU) No 528/2012)では次のような定義がなされています.

「処理品」とは、一つ以上のバイオサイド製品で処理した、または、それを意図的に組みこんだ物質、混合物、あるいは、物品である(BPR 3条 1. l ).

treated articleと、短い名前を与えていますが、その意味は、上記の意味であり、バイオサイド製品で処理―処理及び意図的組込み―をした物品―物質、混合物、物品―を、処理品としています.

バイオサイド製品とは

規則3条1.(a)では定義が二つのインデント段落に分けて記載されています:

一つ目は、

  • 使用者が使うときの形態が物質又は混合物であり、かつ、
  • 下記の意図を目的とした、一つ以上の活性物質で構成されるもの、又は、それを含有するもの、それを発生するものであり、かつ、
  • 意図として、有害生物の破壊、弱体化、無害化、作用の予防、又は、その他の方法で有害生物の影響を抑えるものである.ただし、その方法には、単なる物理作用若しくは機械作用よる方法を含まない.

今一つは、

  • それ自身は前項に合致しない物質又は混合物であるが、
  • 上記の意図で使用することを目的としている物質又は混合物.

そして、

 殺生物性主な機能として持つ処理品はバイオサイド製品と考えるものとする.

としています.

処理品がバイオサイド製品として扱われるケース

最後の一文が、処理品とバイオサイド製品の関係の理解に重要です.

最後の一文が意味しているのは、バイオサイド製品(biocidal product)で処理―処理および組み込み―した物品を、BPR上処理品(treated article)と呼ぶ、その処理品自身の主な機能が殺生物機能(殺生物主機能 primary biocidal function)であるとき、その処理品はBPR上バイオサイド製品として扱われるということです.

では、殺生物主機能 Primary biocidal functionとは何か、そして、殺生物性(biocidal property)とは何か、これについてはまたこのサイトで近いうちに投稿します.

訳語について

このブログ投稿では、次の英単語の訳語として次のものを採用して、REACH/CLP/BPRでの訳語の一貫性をもたせて、わかりやすさを狙っています.

英単語 採用訳語 よくみられるその他の訳語
article 物品 アーティクル, 成形品
treated article 処理(物)品 処理成形品, 処理製品(成形品), 処理された成形品
product 製品
biocidal product バイオサイド製品 殺生物性製品、殺生物製品
biocidal function 殺生物機能 殺生物性機能
primary biocidal function 殺生物主機能
substance 物質
active substance 活性物質
mixture 混合物

例えば、REACHでもCLPでもBPRでもarticleという言葉が同じ概念で使われています.ただし、だからと言って、同じものを指すわけではありません.したがって、欧州が出す各種資料でも、必要に応じて、”not only articles within the meaning of the REACH Regulation”「REACH規則の意味における物品だけでなく」などと説明しています(ECHA 2013).
原文に忠実に、しかも、簡潔に、余分なことを記載せず訳すには、articleを物品と訳すのが良いと考えました.BPRにおけるarticleの意味は物品の日本語の本来の意味とそれほど違わず、REACH/CLPがかなり限定的に使われていると考えられます.BPRのarticleを「成形品」と訳してしまうのはかなり苦しいと考えます.

「バイオサイド製品」とproductの訳語として「製品」を使いましたが、わかりきったことかもしれませんが、productの意味を英英辞書で確認しますと、

a thing produced by labor

material created or produced and viewed in terms of potential sales

(Randam House Kernerman Webster’s College Dictionary Application ver1.0.8)

労働によって製造された物.創作され、製造されたもので、販売される可能性があるとみられるもの (小生の訳).

というわけです.さらに言わずもがなですが、日本語の「製品」の意味は、

原料に手を加えて作った品物 (三省堂 大辞林)

この最後の「品物」というのは今の文脈では少々気に入りませんが、まあいいでしょう.

要するに、バイオサイド製品とは、殺生物機能をもつように製造された物とざっくりとは理解できます.正確な理解はもちろん規則原文をよらなければなりません.

一方、article 物品は、

an individual object, member, or portion of a class; item; an article of clothing

an item for sale; commodity.

(同上)

ある種類の個別の物、その種類に属する物、その種類の属する一部の物; 衣料品、衣類

販売のための物、販売品;日用品

そして、日本語の「物品」は

品物。特に,不動産以外の有体物。 (三省堂)

「製品」(product)は、「産物」「製造物」;「物品」(article)は「商品」「品物」.前者は工業生産上の観点からの言葉であり、後者は商業取引上の観点からといってもいいと思います.

参考文献

BPR Regulation:  REGULATION (EU) No 528/2012 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 22 May 2012 concerning the making available on the market and use of biocidal products  http://echa.europa.eu/regulations/biocidal-products-regulation/legislation

ECHA 2013:  Control of treated articles in the Biocidal Products
Regulation http://echa.europa.eu/documents/10162/11106628/11_bshd_bernsel_treated_articles_en.pdf

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